エリート医師のイジワルな溺甘療法


またこの熱帯魚に癒されなきゃいけないなんて、本当に不運。

藤村整形外科の壁に埋め込まれた水槽の前に座り、ぽこぽこ立ち上る泡とゆらゆら泳ぐ魚を眺めて、中待合に呼ばれるまでの時間を過ごす。

事前予約をしていない今日は、待ち時間が果てしなく長く感じる。

特に主治医が安西先生だと、人気があって担当患者も多いだろうから、余計に時間がかかっている気がする。

十時頃に来て、すでに一時間半経っているのだ。私の順番は、お昼近くになるのかな……。

水槽の中はご飯タイムが始まったようで、ぱらぱらと舞い落ちるエサに反応した魚たちが、ダンスを踊るように上下左右に激しく動く。

そういえば、昨日先生と一緒に作った肉じゃがはすごくおいしくて、あのとき全部食べちゃったんだっけ。


『翌朝の方がさらに味が染みてておいしいから、少し残したらどうですか』


そうすすめたのに、お豆腐の味噌汁とご飯と一緒にぺろりと平らげてしまった。

先生はわりとよく食べるから、あれだけじゃ足りないくらいだったかもしれない。

基準は、あのアンティークなお店で食べたステーキくらいのボリュームだろうか。

医者は体力勝負だもの、もっとたくさん、栄養満点でヘルシーな料理を作ってあげたいな。そうだ、今度は煮魚がいいかも……先生、魚は好きかな。

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