エリート医師のイジワルな溺甘療法
私と同じくらいの歳で髪型はふんわりショート、ちょっと頬が赤くなっていて、指に包帯を巻いている。唇は弧を描いていたから、うれしそうに見えた。あの子も、先生にあこがれているのかもしれない。
あの声の感じだと、私とは正反対な男に甘えるのが上手なモテ系の子だ。
恋のライバルは、無限大に多い。
中待合から人がどんどん減っていって、新たに入ってくる人もいない。
やがて、私とおじいちゃんだけになった。
これはまさかひょっとして。私は午前の部最後の患者なの? 予約してないと、こんなに遅いの?
朝一に来るか、逆にもっと遅く来ればよかった。
ふかーいため息をついていると、診察室の中から先生の呼び声が聞こえて来た。
『瀬川さん、どうぞ』
「はーい……失礼します」
熱帯魚の水槽の前から今現在に至るまで、いろんなことを考えすぎて、なにもしていないのにぐったりしている。
中では先生がカルテに書き込みしている最中で、こちらを見ずに「ん? なんか疲れてるな。もうちょっと我慢して待ってろよ」と爽やかに言う。
ペンを握る長い指が、紙の上を滑らかに動く様を見ながら、じっと待つ。