【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。

　
あたしが慌ててもしかたないのにどうしてもじっとしていられなくて
気が付いたらリョウくんの住むマンションへと向かっていた。


ピンポーン……

少し薄暗いマンションの廊下で、リョウくんの部屋のインターホンを押す。

リョウくん、いるかな……。

ドキドキしながら待っていると、ガチャリと音がしてドアが開いた。

ドアの隙間からのぞいたリョウくんがあたしの顔を見て少し驚いたように眉を上げた。


「あっリョウくん！　突然ごめんね！！　今ちょっと大丈夫！？」
「……悪いけど、これから店に行こうとしてた所なんだけど」

そう言いながらもリョウくんは大きく扉を開きあたしを中に入れてくれた。
慌てた様子で玄関に入ったあたしを見下ろし軽く首を傾げる。

「どうした？」

こんな時なのに冷たい視線であたしを見下ろすリョウくんの表情に、思わずどきんとしてしまう。

「あ、あのね！　リョウくんがバーで働いてるのが学校にばれたかもしれなくて……！」