【惑溺】わたしの、ハジメテノヒト。
あたしが教室で聞いた先生たちの話を聞かせると、リョウくんは面倒くさそうに深くため息をついた。
「どうしよう、もし停学とか退学になったら……!」
慌てるあたしとは反対にリョウくんは冷静でどこか冷めたような態度で
「どうでもいいよ」
と、つぶやいた。
「どうでもいいって……。退学になっちゃってもいいの!?」
どうして?
自分の事なのになんでそんなに他人事みたいに冷静でいられるの?
感情的になるあたしを見てリョウくんは呆れたように目を細めた。
「別に、退学になったってなんの支障もないし、逆に店に出れる時間が増えるから楽になる。
元々行きたくて高校に通ってたわけじゃないし」
まるでいらなくなったものを手放すみたいになんの未練もなく言うリョウくんを、あたしはどうしても引き留めたくて必死に言葉を探した。
「でも、こんな急に退学なんてなったら、……由佳さんだって、心配するよ」
そう言ったあたしにリョウくんはをひそめた。
彼の顔が一気に冷たい表情に変わり、思わず背筋が冷たくなる。
「あ……、あの。由佳さんってリョウくんの彼女なんでしょ? 前に保健室であたしの事を間違ってそう呼んだから……」