あなたの心を❤️で満たして
まさか、嫁いだ先でも取り残されることになるなんて、祖父母は思ってもなかったろう。
きっと私達夫婦が仲睦まじく生きて、楽しく生活できるものだと信じていたのではないだろうか。


そう思うと、やりきれなさが迫ってくる。
だからと言って何処にも行く宛がないのだ…と、諦めながら階段を下りた。



その夜、黒沢さんが帰ったのは夜中の零時を過ぎた頃だ。私は眠れず、相変わらず布団の中で丸くなって起きていた。


ヒタヒタと廊下を歩く足音が聞こえだした時は一瞬だけビクついた。それが確実に近くなるのを感じながら耳をすませ、自分の部屋の前を通り過ぎていくであろう彼のことを考えた。


(たまには出迎えてみるか…)


身体に掛け布団を巻き付けた状態で足音を忍ばせつつドアへ近づく。耳を押し当て、どのくらいまで近付いたかな…と窺った。




(……あれ?)


足音が聞こえない。
まさかもう自分の部屋に入ったの?と思い、ドアレバーを下げるとーー



「わっ…」

「きゃあ!」


驚いて叫び声が上がった。
見ると目の前に彼が立っていて、向こうも同じようにビックリしている。


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