孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 どうやらツボにはまってしまったらしい社長のあふれる笑顔は、羞恥と後悔に赤らめていた私の顔を、ときめきの熱に変えて沸騰させる。

 いつも厳しい表情をしている人が、稀に見せる笑顔の破壊力は、すさまじい威力があるのだと初めて知った。


「す、すみません、失礼なことを申しました」

「構わないさ。
 大海原を自由に泳ぎ回る魚。なにかの型にはまりたくない俺の性に合ってる」

「そんなに笑わないでください……」


 心臓が大きな脈を打って乱れまくる。

 返す言葉もどれがいいのかわからずに、小さな声だけで反論するしかない。

 笑いを抱えたまま駐車場へ戻り、自動で開いたタクシーのドアの中へ乗り込む私を見届けてから、反対側から隣に座ってくる社長。

 いつだってこの距離感は、私の中の女心をくすぐったく刺激してくるけど、今はそれが、いつもより何倍にも増しているような気がした。



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