孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 今回の帰省は、仕事の一環だ。

 地域再生を図る私の地元と、橘社長率いる世界をまたにかける大企業との、観光地経営の協議をしに来た。

 実家へと戻るのは、夜になってから。

 その前に約束をしている場所は、地域の中でも比較的賑わいのある商店街だ。

 時刻は予定よりも少し早い、午後一時前。

 商店街のシンボルでもある小さな時計台の広場でタクシーを下り待っていると、舗道に乗りつけられた車からスーツを着た小柄な壮年の男性が出てきた。

 「こんにちは」と声をかけてきたのは、私の父がお世話になっている地域観光協会の会長。


「久しぶりだね、佐織ちゃん」

「ご無沙汰しています、白石さん」


 目尻に皺の増えた優しそうな彼は、私も昔からよく知っている父の友人でもある人だ。


「Nice to meet you. I'm Tachibana working as the president by Hizen business affairs」
<初めまして、肥前商事で社長を務めている橘です>


 私の隣で、シルバーのカードケースから名刺を取り出した社長は、会長の前に一歩出て丁寧にあいさつをした。
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