孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「初めまして、この町で観光協会会長をしています白石です。あなたが、噂のイケメン社長さんですか。なるほど、聞いていた通りの色男だ」


 親し気に社長を『イケメン』と称しながら、名刺を交換する白石会長。

 今回のビジネスも、社長は日本語を話すつもりはないらしく、対話を繋ぐのが私の役目だ。

 だけど、さすがに社長を目の前にして、『イケメン』だの『色男』だのという言葉は伝えられない。

 私がそう言っているわけではないけれど、私の口から社長本人へ伝えるにはあまりに恥ずかしい。

 社長だって褒めてくれていた。

 必要な分だけを伝える私の機転のきかせ方を。

 わざわざ伝える必要はない部分は、私のほうでカットさせてもらう。

 
『観光協会会長の白石さんです。……よろしくお願いします、と』


 当たり障りのない部分だけを英語に訳すと、


『ちゃんと隅々まで通訳しないとダメだろう』


 白石会長のほうを向いたまま英語を口ずさむ社長は、ニヤリと口の端を上げた。
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