孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「ようこそ、いらっしゃいました」


 フロント前で頭を下げるスーツを着た同年代の男性。

 顔を上げるなり私を見て、やわらかく目尻を下げてにこりと微笑んだ。


「おかえり、佐織」

「ただいま、大和(やまと)。
 すっかり板についてるね、支配人」

「二年も任されてればな」


 久しぶりの再会にも昔と変わらず笑ってくれる彼は、私たち姉妹の幼馴染みで、妹詩織の夫。婿養子としてこの旅館を任されている総支配人の大和だ。


「こちら、肥前商事の橘社長です。
 社長、こちらがこの旅館の総支配人で、私の義弟にあたります」


 ふたりを順番に紹介すると、昼間と同じようにお互い名刺を交わす。

 この旅館も、地域活性化の片棒を担っている。

 社長が手を伸ばそうとしている観光事業に、ぜひともひと役買ってもらいたいと願う。

 そう思う私は、やっぱり肥前商事側の人間なんだと気づく。

 もちろん、実家の家業が賑わってくれるなら、こんなにうれしいことはないけれど。
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