孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「今日はごゆっくりとおくつろぎください」

「お世話になります」


 営業用とわかる社長の口角を上げただけの笑みに、昼間見たあの破壊力抜群の笑顔を懐かしく思い出させる。

 あんなふうに笑う人だとは思わなかったから、口元に引かれただけの笑みにちょっとした優越感を抱く。

 あれは、仕事用ではない社長の素顔だった。

 仕事のこととなれば、なにものにも屈しないあの冷徹な社長に、私があの表情を出させたんだと思うと、ほんの少しだけ自分という人間に特別な色を付けられたような気がした。


 今日ここで宿泊する社長は、フロントでチェックインの手続きをする。

 長身の彼に応対する受付の女性が、ほんのりと頬を染めたのがわかった。

 田舎町ではなかなか見られない“イケメン”がそこにいるのだから、社長はどうしたって女性の目を惹きつけてしまうらしい。

 彼が放つ圧倒的な存在感は、どこに居たって健在だ。
< 127 / 337 >

この作品をシェア

pagetop