孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 完全に“経営者”としての顔をしていて、ピリッと走った緊張感に背筋が伸びる。

 社長は簡単に自腹を切るというけれど、今回予約した部屋は通常の宿泊費よりも倍以上の値段はするいわゆるスイートルームだ。


『ですが、お部屋の価格が……』

『かまわない』


 何度も言わせるなという切れ長の瞳の眼力に圧され、受付の女性に「お願いします」と頭を下げざるをえなかった。

 チェックインの手続きを待つ間に、社長は経営者の顔をしたまま英語を私に寄越す。


『前の社長は、こうやって経費を湯水のように使っていたんだろう』


 図星に罪悪感を感じるのは、秘書課の私までもが、前社長の浪費の常習化を暗に認めてしまっていたからだ。


『週明けは、経理部に抜き打ちで入る。事前の連絡は不要だ。経理部長のスケジュールだけ見ていてもらえればいい』

『か、かしこまりました』


 ルームキーを受け取りながら、横目に私を捕らえる切れ長の瞳に背筋が凍る。

 週明け、私が通訳をすることになるであろう、経理部の面々の青白い顔が目に浮かぶようだった。
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