孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 初めて口にして、かすかな自信が胸を震わせた。

 社長は、私だから秘書として付けてくれた。

 代わりはいないと言ってくれた。

 私の居場所を彼は、作ってくれたんだ。


「大和には、きっとわからないよ」


 今ここに社長がいないことが、とても寂しい。

 私を必要としてくれる彼の、あの切れ長の瞳に見つめてほしいとさえ思う。


「お前も……」


 はあと大きくため息を足元に落とす大和は、一度下げた視線を上目づかいに戻してくる。


「なんにもわかってなかったんだな、……俺の気持ちも」

「なによ……大和の気持ちって」


 睨むような瞳が私を威圧する。

 実家を継いだことが、不服だとでも言いたいのだろうか。

 それとも、妹にすべてを押しつけて帰郷しない姉のことが腹立たしいのか。

 誰も私に聞かせない非難を、大和は遠慮なくぶつけてくるようだ。
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