孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 節ばった長い指が、何束もクリップ留めされた机上の紙の山を叩く。

 明らかに不機嫌を露にしているその原因がわからず、室長を介さず恐る恐る尋ねた。


『無駄、とおっしゃりますと……?』

『見ろ。
 無駄がここに山のように積まれてるじゃないか。
 このペーパーレスの時代にこの紙の量は一体なんなんだ?
 これを印刷するのにも時間とコストが掛かるだろう?
 しかも、俺にこれを持ち歩けとでも言うのか?
 それともなにか? ここでおとなしく椅子に座って悠長に眺めろとでも?
 ふざけるな、それこそ時間の無駄だ。

 これは全部俺宛のメールに、データで寄越すように指示しろ』


 たくましい肩越しに振り返り、捲し立てる英語は、さらさらと少しの淀みもなく滑らかに形のいい唇からあふれてくる。

 無駄、と言っているだけあって、その口調にも鋭い眼光にも、有益なものしか必要としないという雰囲気が存分に込められていた。
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