孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 秘書として、社長の居住地くらい知っていなくてどうする、と今さら気づいたことに青くなる。

 通勤時間はどのくらいかかっているのかとか、もし早朝に緊急の来客や会議等があった場合への対処方法も異なってくる重要なことだ。

 
「悪かったな、席をはずして。戦略室長の後がまからだった。明日にはこっちに着くそうだ」


 ちょうどそこへ戻ってきた社長。

 くつろいでいた姿勢をぴっと伸ばして、ちょっとだけ仕事の空気を醸した。


「社長」


 目の前に腰を下ろす社長は、私のあらたまった空気に首をかしげる。


「どうした、あらたまって」

「つかぬことをお伺いいたします」

「なんだ、怖いな」


 怖いと言いながらも口元がほころんでいるのはきっとお酒のせいだ。

 いつもの泣く子も大泣きさせるような威厳が薄れている今は、ささやかなニアミスも受け流してもらえるのではないかという希望を込めて口を開く。


「社長は今、どちらにお住まいなのでしょうか」


 膝の上に握った拳にぎゅっと力を込め、本当に今さらな質問が、社長の逆鱗に触れないかと身を固める。
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