孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 社長が日本に来たのは、十一月の頭。

 そして、今は十一月下旬……。

 すでに二十日以上は宿泊していることになる。

 一泊うん万円もする、高級ホテルに。

 考えただけで目眩がする。

 くらくらと頭が揺られるのはお酒のせいではない。

 泊まるにしても、なぜビジネスホテルにしなかったのか。


「一番利便性のいいホテルを適当に選んだが、従業員と顔見知りになってくるといろいろ気まずい。だからって、点々とホテルを渡り歩くのも面倒だしな」


 ……らしい。

 このハイレベル男子は、きっと格安ホテルでは収まりきらないのだろう。


「は、早くおうち探しましょうね……」

「ああ、頼むよ」


 カニの塩ゆでを前に、口元をほころばせる社長の目は、やっぱりキラキラと子どものように輝く。

 適当にホテルを選んで、何十万円もかけた連泊を平気でしてしまうような人の顔ではない。

 そんな社長の表情に、なんだか胸の端っこがこちょこちょとくすぐられる。

 もしかしたら、仕事一貫の橘勇征という人は、仕事以外の自分の身の回りのことはおろそかにしているのではないかと、妙な保護者意識が芽生えた瞬間だった。



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