孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 懐かしい匂いに包まれたベッドの上で、ごろごろと今日あったことを思い出していると、枕もとに置いていたスマホが不意に鳴った。

 表示を見ると、“橘社長”の文字。

 時刻は二十二時半を過ぎたところで、大人となった今は夜更かしという時間ではないけれど、電話を受けるのには珍しい時間帯だ。


「はい、鹿島です」

『ああ、お疲れ』


 いつものキリッとした背筋を伸ばさなければならないような声の張りは、まだ取り戻していないようだ。

 それでも、上司からの電話には、なぜか正座をしてしまった。


『悪いな、もう眠ってたろう』

「いえ、大丈夫です。なにか、早急な対応が必要になりましたか?」

『いや、特にそういうわけじゃないんだが』


 上司から夜更けの電話だ。

 なにか仕事でトラブルでもあったのかと心配になったが、どうやらそういうわけでもないらしい。
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