孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


「こんな時間にうろうろしてたら職質されますよ」


 海を背景にたたずむうしろ姿に、そうっと近づく。

 見つめていた海から振り返ってくる社長は、紺の羽織姿で腕を組み、その下に白地に藍の柄が入った浴衣を着ていた。


「まだ十一時前なのにか」


 浴衣が醸す独特のふんわりとした色気に、私の胸はたやすくときめかされる。

 そんな社長の声はやっぱりまったりとしたままだ。


「もう十一時です。田舎は都会よりもうんと夜更けが早いんですよ」

「そうか」


 うなずきながらも、ドキドキをごまかし軽く諫める私を、たいして気にしない社長。

 威厳あるオーラはなく、少しだけ気だるそうに見えるのは、酔いが冷めていないからかもしれない。
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