孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 触れられた心から、誰にも打ち明けたことのない本音がぞろぞろと出てくる。

 社長の瞳が、私に心を開かせる。

 “私だから”だと言ってくれた社長なら、受け止めてくれるだろうと思ったから。


「帰るなよ」


 心を打ち明ける私を、切れ長の瞳が真っ直ぐに見つめてくる。


「俺はお前のこと、全力で引き止める」


 世の中すべてを統べるような眼光の強さに、心臓が大きな音を立てて脈を打つ。

 “私”を必要としてくれる社長の気持ちが、目を逸らさせなかった。


「かわりなんていない」

「社長……」


 社長が現れてから、自分がどうあるべきなのかを強く意識するようになった。

 こんなふうに、私のことを真っ直ぐに見つめてくれる人が、他にいただろうか。

 私を必要としてくれて、信じてついて行こうと思える人も、他にいなかった。


「どこかへ行こうとする必要はない。ここにいればいい」
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