孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「どこにいても、同じだ。はっきりと自分のいるべき場所を確かめられるのは、仕事をしているときだけだからな」


 細められた瞳に、心が同調する。

 大きな会社を任される責任の大きさは計り知れないけれど、そこで自分を奮い立たせることで居場所を確保している社長も、私と同じなんだ。


「時々思うんだ。帰る場所があれば、なにか違うんだろうかと。
 当然ホテルは家じゃない。向こうに実家はあるし、ひとりで暮らしていた自宅マンションもある。だけど、そういうことじゃないんだ」


 わかるだろう?と言われているような瞳の思いが伝わってきて、胸がきゅっと切なくなる。

 完全無欠の仕事人間の冷徹な社長だと思っていた人だって、“寂しい”という気持ちを抱えていたなんて。

 私も、そう。

 “寂しい”と思っていたんだ。

 誰かに認めてもらうことで自分を鼓舞してきたけれど、求めても求めても満足できなかったから。

 社長もきっと、こんなじれったい気持ちを抱えてきたのかもしれない。


「それを知りたいと、ずっと思っていた」
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