孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「ああ、そうか。日本の女性には、こういう遠回しな言い方では伝わらないんだったな」


 膝の上に持っていたグラスが社長に取り上げられると、手持ち無沙汰になった私の手は、大きな手のひらに掬われた。

 もう何度か触れた男の人の頼もしさに、今までで一番心臓が大きく飛び跳ねた。


「日本のこういう文化は、とてもいいと思う。はっきりと気持ちを確かめられるし、想いを伝える美しい日本語がたくさんあるからな」


 無邪気に髪と戯れていた指が、今度はゆったりとした色香をまとった所作で私の頬を包んでくる。

 途端にかっと熱くなる顔が、社長の手のひらにその熱を伝えてしまっていると思うと、恥ずかしくてさらに温度を上昇させる。

 それでも目を逸らさせない眼光に、視界が震えた。


「だけど、俺はあまり駆け引きは得意ではないんだ。何事にもストレートでなければ気が済まない」
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