孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「かわいいな、君は」


 一瞬だけ空気を止めた社長はふっと破顔すると、また唐突なことを口にした。

 今度のそれはさすがに意味を理解し、恥ずかしさにぼっと急騰した顔をうつむかせてしまった。


「いつもひたむきに頑張っている君のこと、周りは誰も気づいていなかったから、俺だけが見つけたんだと思ってた」


 社長が、私は気の利く部下だと言ってくれたから、ビジネスパートナーとして自信を持てた。

 もしいつか、社長が私の上司ではなくなる日が来たとしても、その自負心を忘れずにいれば、今のような焦燥感を抱くことなく、自分の立ち位置をしっかり見据えていけるんだと思わせてくれた。

 社長は、私に自分の在り方を導いてくれたとても尊敬する人だ。

 そんな彼が、……私を、好き……?

 
「でもそれは俺だけじゃなかったらしい。
 彼は、君の素顔や性格を知っているんだろう。君がこの町でどう育ってきて、これまでどう生きてきたのか、俺が知りえないたくさんの君の姿を、彼は見てきたんだろうな」


 少しトーンを落とす社長の声音に、いつもの自信が陰りを見せる。
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