孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 いつものなにものにも屈しない自信に満ちた社長の表情が、なくなってしまっているかもしれないと心配になり、落とした視線を上目遣いに上げる。

 だけど、私を待っていたのは、距離を縮めてきていた端整な顔。

 私の心までの覗き込んでいるような、深さを持った瞳が私の胸を大きく飛び跳ねさせた。


「彼、って……」

「あの彼だよ。仲よさそうにしていたじゃないか、義弟くん」

「仲がいいというか、昔からの幼なじみで……」


 詩織に大和の思いを聞かされたからだろうか。ただの幼なじみなのに、私を見つめる瞳に罪悪感を感じる。

 まるで、嫉妬でもしているような社長の心が降ってくるようで、胸がきゅうと息苦しく締めつけられた。


「そこ、だな。俺の知らない佐織を知っているのが悔しかったんだ。仕方ないことだと頭ではわかってはいたんだけれど、気持ちがどうにも納得してくれなかった。
 ……そこで気づいたんだ。俺はお前を独り占めしたかったんだって」


 独り占め……


 その言葉に、窮屈だった胸がむずむずとした気恥ずかしさにうずく。

 胸の中から湧き上がる熱が、嬉しさをかき集めながら全身に広がっていく。
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