孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 私の目眩を落ち着かせるかのように、優しく頭を撫でてくる大きな手。

 だけど、落ち着くどころかますます混乱し、私は自分の状況判断も上手くできずにいる。


「今言われてすぐに君の気持ちが俺に向くとは思ってない。
 が、容赦なくいくから、覚悟してろよ」


 頬に落ちる私の髪を耳にかけ、あらわにされたそこに、社長の声が直接吹き込まれる。

 その声がとろけるほどに甘くて、体中の血がたちまちのうちに沸騰した。

 たくましい胸に抱き寄せられた私の頬に、ほっと息を吐く声の振動が伝わってくる。


「温かいな……」


 私の体温を感じとったように呟く社長。

 背中に腕を回されると、包まれる頼もしさになんだか安心する。

 どきどきと急く鼓動は落ち着かないけれど、私を必要としてくれる社長の想いに包まれているようで、瞼が重くなった。


「佐織、俺を好きになって」

「急に、そんなこと……」

「ああ、わかってるよ」


 そうだ、突然思いもよらない告白を受け止めることすらままならないのに、社長のことを好きになるだなんて言われてできるようなことじゃない。
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