孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 だって、私は社長の部下で、社長は私の上司で……

 体の熱が上がりぼんやりとする頭では、うまく思考が回らない。


「それなら、まずは俺のことをいろいろ教えようか」


 私を覗き込んでくる気配に顔を上げると、やんわりと細められた瞳が私を見つめてくれていた。

 ぼうっとしているのに、私を捕らえる瞳の綺麗さに高鳴る胸の音が聞こえた。


「なにが知りたい?」


 頬にかかる髪をそっと払ってくれる社長の手は、火照っている私の顔をするすると撫でる。

 
「……どうして、私なんかを……」


 こんなふうに触れてくれる社長の気持ちがわからなくて、誘導されるままに疑問を零した。


「賢いし、気が利く。仕事熱心で、自分に妥協しない。日本舞踊が踊れるし、着物も凄く似合っていたよ。それに……素直で可愛いところ、か。
 ああこれじゃあ、お前のことばっかりだな」


 くすりとこぼされる笑みに、胸がきゅんきゅんと締めつけられる。
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