孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 ゆらゆらと揺れるタクシーの中、隣に座る社長の気配をいつも以上に強く感じて、おのずと端のほうへと身を寄せてしまう。

 車窓を流れていく景色は緑の山並みなのに、頭の中を占めるのは隣に座る人のことばかりだ。

 なにもされていないらしい、とはいえ、一夜を同じ布団で過ごしたのかと思うと、意識せざるを得ない。

 しかも、大企業を率いるハイレベル男子に想いを寄せられていると知った今、どう振る舞うのが自然なのか恋愛未経験の私にはあまりにもハードルの高い試練なのだ。


「佐織」

「はい……っ!」


 名前を呼ばれただけなのに、過剰反応する私は、思わず振り向いた先で待ち構えていた切れ長の瞳に捕まり、簡単に心臓をその視線で打ち抜かれて脈を乱した。


「家、どういうところに住みたい?」

「えっ」

「帰ったらその足で見に行きたい」


 嬉々として目を細めている社長は、新居を探したのち本当に私も一緒に住まわせる気だ。
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