孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 考えてみれば、順序が逆ではないだろうか。

 一緒に来いと言われても、私はまだそうするとは返事していないし、まして社長の告白に答えもしていないのに。

 付き合う以前の男女が一緒に暮らすなんて、世間一般の誰が認めるのだろうか。

 だけど、今はどういう部屋に住んでいるのかとか、どのくらいの広さがあればいいかとか。場所はどのあたりが利便性がいいのかとか。

 あれこれと尋ねてくる社長のうきうきとした表情を見ると、もう拒否はできないような気がした。


 ――『俺の帰る場所にならないか』


 それに、昨夜ああ言っていた社長は、私と同じように居心地よく帰れる場所を持たなかったのだ。

 私がその居場所になってあげられれば、と思うのは、どこからくる感情なのだろう。

 ただの同情? それとも、もっと別の場所から生まれてこようとしているこそばゆいような気持ちからなのだろうか。

 一生懸命に話をする社長を、私はいつのまにかじっと見つめてしまっていて、そんな私を見つめ返してくれる切れ長の瞳がまたふっとやわらかく笑んだ。
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