孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 そのままタクシーに揺られること一時間。

 着いたのは実家の前にある漁港とはまた違った、広大に広がる青い海を望む場所。

 前もって予約していたのは、イカの活き造りが食べられるお店だ。

 叔父の店にイカを直送してくれている本家が九州にあると聞き、その中でも叔父が勧める料亭にやって来た。

 前掛け姿の仲居さんに通されたのは、二階にあるお座敷の席。

 個室になっているそこには、先客がいた。


「お疲れさまです」

「Hi. Mr.Asada.」


 先に通された私に続き、社長も同じく声をかけた相手は、元戦略室長で現福岡支社営業部長の浅田氏だ。


「お疲れさまです、橘社長。鹿島くん」


 にこりとも笑みもせず、強張った表情で挨拶をする浅田部長。

 休日にもかかわらずここに彼を呼び出したのはほかでもない、橘社長だ。
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