孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 ゆったりと打ち寄せる波の音が、少し先のほうから聴こえてくる。

 オフシーズンの海水浴場は初めてだ。

 季節が逆になると、無条件に切なさをあおられるのはなぜなんだろう。

 東京へ帰る飛行機が発つまでにはまだ時間があり、料亭近くの海岸へ社長と散歩をしに来た。

 叔父のところで食べたものよりももっと新鮮なイカの活き造りに、社長はとても満足していたようで、今回のこの九州出張は、地元出身者の私としてもいい仕事になってよかったと思った。


「向こうに海中展望室があるんですよ。行ってみませんか?」

「海の中が見れるのか、いいな」


 海岸沿いの遊歩道の果てに桟橋が掛かり、その先に海中に建つ塔が見える。

 海と魚が好きな社長なら、きっと楽しんでもらえるのではないかと思ったここには、ぜひ連れてきてあげたいと思っていた。
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