孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 すると、社長は突然ぐっと私の手を引き、クローゼットを突き抜ける。

 廊下に出ると、向かい側にあったパウダールームへと私を連れ込んだ。

 ぱたんと扉を閉められたそこは、どこかの高級百貨店のレストルームのように広く、白で統一されたクロスと洗面台が品位高い雰囲気を見せていた。

 さすが月数十万円もするお家賃の家だと感心していると、繋いでいた手が解かれかすかに寂しさを過ぎらせる私を、社長は後ろからぎゅっと抱きしめてきた。

 心臓がどきりと大きく跳ねあがり、背中から焼けつくような熱さに包まれる。

 私たちを見失ったルイさんや案内の男性がやって来ないかと焦るのに、耳元で「佐織」と呼びかける社長の低く囁いた声に抵抗を考えられなかった。

 耳の後ろに軽く唇を触れられた感触にぞくっと首をすくめると、顎にかかってきた長い指に顔を上げさせられる。

 後ろから私を覗き込んできた社長が、やさしい口づけをくれ、焦っていた胸がきゅうっと締めつけられた。

 不意打ちのキスと、伏せられたまつげの長さにときめく私を、社長は強く抱きしめなおす。
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