孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 とはいえ、そのあとのいわゆる各部門の個人面談は、阿鼻叫喚の様を目の前で心痛く見るはめになった。

 社長指示とのことで、慌ててメールの送信をしてきた各部署の統括者達。

 まさか送信順に面談が行われるなどとは、思ってもみなかったらしい。

 メール受信後、間髪入れずに呼び出しを食らい、まるで処刑を執行されるかのように青ざめた様相で、社長室へと顔を出してきた。

 橘社長の厳しい追及を通訳するのが私の役目。

 まるで、刑の執行自体を、私の手で行っているような重い重い気分だった。


『自分の部署の数字も把握していないのか。話にならない』

『理由もわからず指揮を執っているのか? よくそれで部下に指示できたものだな』


 できるだけ言い回しを柔らかくしたつもりだった。

 けれど、内容が内容だったし、橘社長の鋭い眼光の前では、なにを言っても部長達は白目を剥きそうになっていた。

 社長の言葉を通訳している私に、時折向けられたいたわしげな眼差しは、苦しみの中にわずかな慈悲でも乞うているようで、あまりの辛さに私のほうが泣き出してしまいそうだった。
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