孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 そうだよね……あんなに素敵な人に、特別なパートナーがいてもなんの不思議もない。

 むしろいないほうがおかしいんじゃないかな。


 一生懸命現実を納得しようとするけれど、考えれば考えるほど胸はぎゅうぎゅうに締めつけられて苦しい。

 あまりにきつく締められる部分が、ズキズキとした痛みを伴ってきた。


 話を終え私たちの元へ歩み寄ってくる社長を見て、どきりと心臓が飛び跳ねる。

 さっきまではずっと見ていたいとすら思っていたのに、目が合う前に視線を逸らしてしまった。


 こんなに胸が重いのはなんでなんだろう。


 ――『好きなんだ、佐織。君のことが』


 ちらっとバレないように盗み見た社長の姿に、胸がきゅうっと息苦しく痛む。


 私のこと、好きって言ってくれたのはなんだったのかな……

 やさしく抱きしめてくれたり、キスをくれたりしたのは……


 今日行った物件で、ふたりきりになったとき、ぎゅっと抱きしめられた力強くて温かな感覚を思い出した。
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