孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 ――『佐織』


 そっと耳元で呼んでくれた深みのある声。

 その名残を手繰り寄せていると、そのときに言われたことにはっとする。


 ――『あいつになにを言われても、絶対に鵜呑みにするんじゃないぞ』

 ――『なにか不安に思うことがあったら、まず俺に確認しろ』


 社長が言っていたのは、こういうことなのだろうか。

 ルイさんに気をつけろというのも、社長のいないところで、彼がこんなふうに私になにか吹き込んでくることを懸念していたのだろうか。

 実際にこうやって、もやもやとしたものが胸に立ち込めている。

 ルイさんに煽られたこの気持ちは、“不安”なのだと気づいた。

 社長の気持ちが本物なのかどうか、わからなくなって不安なんだ。

 社長が本当に好きな人は、海の向こうにいるかもしれないことが不安なんだ。

 そういう気持ちがあるなら、その要因を社長に尋ねるべきだ。

 私にはその権利があるし、社長もそうするように言っていた。
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