孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 経理部に赴いた社長は、彼が自ら今期期首からの費用項目の全てに目を通した。

 挙げればきりがないほどの指摘の嵐に目を回す経理部の面々を前に、私は社長の観察眼と洞察力に舌を巻いた。

 その日のうちに、経費に関する指導要綱を社長の指示のもと作成し、社内・全国の支社全社員へ一斉送信した。

 丸一日を費やした経理部への指導を終えたのは、定時を超えた時間。

 残業の多さに苦言を呈していたのは社長だったけれど、必要な残業というのはこういうことをいうのだと誰も文句は言えなかっただろう。


 くたくたになりながらも、ルイさんの言葉がときおり私の胸をいたずらにチクチクと刺していた。

 仕事に集中する社長のそばについていても、ほんの少しの心の隙間に入り込んでくる不安。

 気を抜くとぼうっとしてしまうところを、社長の声ではっとすることが何度かあった。

 早く不安を取り除きたいと思ったけれど、真剣に会社のためを思って頭を働かせている彼を前に、たとえ休憩時間であってもプライベートなことを挟むのははばかられた。
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