孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 とても近くなった気配に、ドキドキとすることが当然になっている。

 前はもっと怯えのようなもので、鼓動を急かしていたのに。

 それでも、社長がそばに私の居場所を作ってくれたから、そこに自分の存在価値を見出すことができた。

 もしこの先、社長がここからいなくなったとしたら……

 別の誰かの元へ、帰ることになってしまったら……

 せっかくのときめきが、心を侵食する不安に押されそうになっていると、そばに立った社長は私をたくましい腕の中に閉じ込めた。


「どうした? 働かせすぎて、疲れたか?」


 いつになく優しい声音に、不安がる心に安堵が満ちる。

 きゅっと抱きしめる腕に力が込められると、覗き込んできた社長の唇がそっと私に触れた。

 もう何度目のキスなんだろう。

 社長のやわらかさはとても心地よくて、ずっと触れていたくなる。

 一度ふたりの間に隙間を作られると、もう少しだけ、と欲張る心が私のかかとを上げさせた。
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