孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 顔を上げる社長は、濡れたままの唇で私の頬に触れる。

 背中を抱き込まれたかと思ったら、頭をかばわれた私の体は重厚なデスクに押し倒された。

 私に降り注いでくる切れ長の瞳の妖しいきらめきに、胸は大きく飛び跳ねる。


「おねだりなんて、いつのまに覚えたんだ?」


 にこりと口の端を上げた社長は、私の体を覆うように上からデスクに手をつく。

 ドキドキと脈打つ心臓をかばうように抱き寄せていた両手。

 社長によって順番に胸元から解かれ、長い指に絡み取られた手は、冷たいデスクに押さえつけられた。


「私、おねだりなんて……」


 身に覚えのないことに弱々しくかぶりを振るものの、わがままな子は許さないとでも言うように両手の解放はしてもらえない。

 抵抗できない私をあざ笑うように、開かせた胸元に社長が顔を寄せる。

 彼は吐息だけを首筋に吹きかけて小さく笑った。


「自覚なしか、悪い子だ」


 温かなささやき声が肩をすくめさせ、背筋に駆け下りたくすぐったさに身をよじった。
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