孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 もしかしたら、社長が私を特別なように扱うから、自分でも勘違いをしてしまっている、なんてことあるのかな……。


 ――『向こうには彼を待っている子がいるからね』


 自分の気持ちに自信がなくて弱気になる心に、ルイさんの言葉が横入りしてくる。

 私を好きだと言ってくれた社長の言葉に、私はのぼせ上がっているだけなのかもしれない。

 もし社長が私のことをなんとも思っていなかったら……?

 疑いの心を持ってしまう自分があまりに情けなくて、鼻の奥がツンと沁みてくる。

 そしてその疑いが、温まった心にズキズキとした痛みを与えてしまう。


 ――『好きなんだ』


 世の中を統べるようなあの瞳の真っ直ぐな想いを疑いたくない。

 思い出すだけで私の心を熱くしてくれる彼を疑いたくないから、もう一度きちんとその気持ちを確かめたい。

 彼を信じていたいと、私に触れてくれる唇の熱さの名残を感じながら、心を守るように眠りの中へ意識を委ねた。



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