孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 翌日、会社では仕事のことに集中している社長に、なかなかプライベートな話ができないまま、午前中の業務を終えた。

 ランチの時間を一緒に取れればと思ったけれど、社長は昼前からネットのテレビ通話で米本社への報告会に入ってしまった。

 話をするなら業務後。帰ってから電話をするのが一番だと考えていると、


『サオリ』


 昼休憩を終え、化粧室から秘書室へ戻る途中で、ルイさんに呼び止められた。

 にこりと王子様の微笑みを浮かべる彼に、一緒にランチに出ていた同僚は頬を染める。

 先に戻るという同僚と別れると、人の往来の多い廊下から、誰も居ないフリーブースに連れていかれた。


『いかがなさいました?』


 一席ごとに作り付けのつい立で区切られた一角に入り、なにか込み入った話でもあるのかとルイさんと向かい合う。

 見上げた小顔の青い瞳は、バッグを抱きしめた私を壁際に追い詰めると、真剣な眼差しで私を見下ろした。
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