孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 私が社長にプライベートな問題をいつ問いただそうかとやきもきしている間に、彼は東京本社や米本社のことで頭をいっぱいにしていた。

 先日PCの前で頭を抱えていたのも、そのことに悩んでいたのかもしれない。


『今ユウセイは、サオリのことと向こうに待たせている子のことを、両天秤に掛けている暇なんかないんだ』


 自分の浅はかさに、秘書として彼のそばに存在意義を見出した心が、自信を打ち砕かれる。


『いつだってユウセイのことを見ているのなら、わかるだろう。彼にとっての一番が仕事であること。
 ユウセイのそばにいる君が不憫で仕方ない。彼の気まぐれな言葉に浮かれてしまっているのがよくわかる』

 
 社長のあの言葉は、気まぐれ……

 私を見つめてくれていたあの穏やかな表情は、一時的なものなの……?

 社長が言ってくれた言葉に、私はただ浮かれていただけ……?

 のぼせ上がっていた胸が頭から冷やされ、急激にズキズキとした痛みに襲われる。
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