孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 その苦しさが一体なんなのか。

 それを、離れてしまった唇の名残惜しさの中に見つけてしまった。


「どうしたんだ? ずいぶん積極的じゃないか」

「すみません……」

「少し驚いただけだ、なにも悪くない。そういう君も好きだよ」

「社長……」


 ぎゅっと抱き寄せられ、たくましい肩にすがりつくように腕を回す。

 私を包み込む人の膝の上で、はしたなく身を預けた。

 どうしよう……私……

 この人から離れたくないって思ってる……

 好きって言われて、のぼせ上がっているからじゃない。

 こうやって私を求めてくれるからだけじゃない。

 いつか遠いところに行ってしまうんだとわかっていても、私ではない誰かの元へ帰ってしまうんだとしても……

 社長のことが好きっていう気持ちは、自分の中から自然と生まれたものなんだと気づいてしまった。
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