孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 ルイさんはそのまま、なにも言わずに近くまで歩み寄ってきた。

 恥ずかしいどころの話ではなく、彼に鋭い視線を向けられた私は、すごすごと社長の膝から委縮するように降りた。

 明らかに彼は私に対して憤りを覚えていたと思う。

 社長に余計なことを考えさせるなと忠告されたのにもかかわらず、会社の社長室でいかがわしいことをいたしていたなんて。

 しかも、社長は今トラブルを抱えているらしいのに、私は気づいた気持ちをどうしようだなんて自分のことばっかり考えていて。

 ルイさんは私が退室するまでの間ずっと無言を貫き、いつもの軽快な雰囲気は一切醸さなかった。

 その後彼らは、米本社からの指示のすり合わせのため、長い時間社長室にこもっていたようだ。

 私が退社の挨拶をしに社長室へ戻ったときもまだ話は続いていたようで、先に帰ることを告げた私に「すまない」と謝ってきた社長を、ルイさんは尖った声で呼び戻していた。



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