孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 社長はもうホテルに戻ったかな……

 午後からずっと、定時を回ってもなおルイさんと真剣に話し込んでいたようだったけど、そんなに深刻なトラブルが起きているんだろうか。


 ――『サオリに言ってもわからないから』


 ルイさんの言葉に、社長を想って熱くなっていた胸がずきっと痛む。

 少しでも彼を近くに感じられればと手に取ったスマホに社長の名前を表示させてから、さっきまでとは違うため息を吐いた。

 私は社長をサポートする立場にあるけれど、それは実務上彼の手の届かない部分の補助をするだけだ。

 経営のなにを知っているわけではないし、彼が悩んでいることに的確な助言をすることもできない。

 ルイさんのように、一緒に考えてあげることもできないのだ。

 もう一度ため息をこぼし、社長の名前を隠すように暗転したスマホを見つめる。
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