孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「あ、いえ、あの、どうされたんですか?」

『ああ、君の声が聞きたくてな。今日はあまりゆっくり話せなかったから』


 社長はあいかわらず私に対して、甘やかすような言葉を言ってくる。

 彼への気持ちに気づいてしまった私にとっては、どこまでも心を浮かれさせる。

 社長は今ひとりなのだろうか。

 いつもそばにいるルイさんの存在を感じられず、彼に言われたことも、今だけはそっと耳を塞がせてほしい。


「……私も、です……」


 私を咎める人がいない安心感にほっとする口から、思わず言葉がこぼれてしまった。

 はっとしたときには遅く、なにも言わなくなってしまった社長が、今どんなことを思っているのかが不安で、調子に乗って口を滑らせた自分を呪った。
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