孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 カップに口を付けた鼻筋の通った横顔が、横目だけで私を見てくる。


「いや、すまない。謝るのは俺のほうだ」


 目が合うなりぱっと逸らされた社長の耳が、ほんのりと色づいていた。

 もしかしたら社長は、一瞬我を失っちゃったのかもしれない。

 見たこともないぎらついた瞳が、大人の男の人を思わせたから。

 だけど、私の声はちゃんと聞いてくれた。

 我を忘れた自分を恥ずかしく思っているかもしれない社長が、可愛いと思った私は変わっているだろうか。

 もう冷えてしまっているであろうお茶を律儀に飲んでくれる社長のそばに、擦り寄るように座り直す。

 膝と膝が触れあう近さに戻れたことで、ほっと安心する。

 やっぱり私の居場所は、社長の隣なんだとあらためて感じた瞬間だった。


「すみません、少しだけ……怖くて」


 きちんと自分の思いを告げると、逸らされていた瞳がおずおずと私に戻ってきてくれた。

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