孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 切れ長の瞳に射貫かれ、さっきの口づけに熱をくべられた体が抵抗を阻止される。

 だけど、会社ではしたない気持ちをむずむずと膨らませる自分が恥ずかしくて、顔を落としてくる社長を制しようと試みた。


「しゃ、社長っ、なにか用があったのでは……っ」

「お前を迎えに行こうと思っていた。車は断られたからな。せめて出迎えくらいはしたかった」


 さっきまでの鋭い眼差しを消し、私を見るときにだけ見せる甘やかな表情に、たやすく胸はきゅんとときめいてしまう。

 そしてそのままなし崩しに、やわらかな口づけを受け入れてしまった。


 朝マンションを出るとき、私の自宅にハイヤーを回すと言い出した社長。

 さすがに、社長が一緒でなければ高級ハイヤーに乗るなんて、誰にどんな言い訳をすればいいのかわからないような状況はまずいと思い、丁重にお断りした。

 たとえ社長が一緒だったとしても、朝一緒に出勤するのはなにかと不都合な点が多すぎるんだけど。

 女尊男卑の精神に拍車がかかった気がする社長には、電車通勤は日課だから大丈夫だと必死に説得しなければいけなかった。
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