孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 その贅沢さが心を満たしてくれていて、大好きな人に必要とされて愛される今が“幸せ”なのだと実感する。

 社長への想いが胸をいっぱいにして、溜めきれなくなった分を、はあと熱いため息に変えて吐き出す。

 それでも収まりのつかないときめきに、体をぐっと丸めて悶えた。


「どうした、ため息なんて吐いて」


 私の胸をいっぱいにする張本人の声が突然耳に届き、驚いてばっと飛び起きる。

 自分の気持ちが漏れ聞こえていなかっただろうかと焦っていると、社長はベットに座り込む私のそばまでやってきてやさしく額に口づけてきた。


「寂しかったか?」


 どうやら気持ちがこぼれていたようで、観念して小さくうなずく。

 すると社長は今までにみたことないくらいに眉を下げて、私の頭をやわやわと撫でた。


「すまない、佐織。向こうの本社に呼び出されたんだ。明日朝一でニューヨークへ発つことになった」

「え……」


 唐突な話に、幸せでいっぱいだった胸がたちまちのうちに冷水を浴びせられる。
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