孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 翌朝、私の出社時間ぎりぎりで、空港まで社長を見送りに来た。

 少しでも長く一緒にいたいと思ったのは、社長も私と同じだったようで、空港までの車中ずっと手を繋いでいた。


「お気をつけて」

「ああ、行ってくるよ」


 出発ゲートまでは時間的についていくことができずに、送迎車用の乗りつけ場所で見送ることになった。

 最小限の荷物を抱えた社長は、一歩進めた足を踏みとどめる。

 思い出したように振り向いてくるなり、首根っこを抱えてやわらかな温もりを私の唇に残してくれた。


「週末までには帰る」

「はい、いってらっしゃい」


 今生の別れでもあるまいし、さすがにしょぼくれすぎかと思うくらい、声が上がらなかった。
< 312 / 337 >

この作品をシェア

pagetop