孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 もちろん、今ノックしてもなんの返事もあるわけがないそこから、引き剥がすように視線を戻すと、ちょうどエレベーターが到着し扉が開いた。


『やあサオリ、ちょうど今君を迎えに行こうと思っていたんだ』


 朗らかな英語で可愛らしく現れたのは、金髪天使のルイさんだ。


『お、お疲れさまです。どうされました?』


 数日前と同じ状況に、肩をすくめて身構える。

 この前とはずいぶん違いにこやかな表情だけれども、社長に注意されたように警戒心は解いてはいけない。

 それに、しばらくはこんなふうに積極的に絡んでこなかったのに、一体どういう風の吹き回しなのか。

 不信感は募るばかりだ。


『ご飯食べいこう。この前の君の叔父さんのお店。あそこのスシは美味しかった!』

『えっ、あの……っ』


 私の警戒心に構うことなく、無理矢理に腕を引っ張ってエレベーターに乗せられる。

 途中数人が乗り込んできたから、この前のようなふたりきりの状況は避けられたけれど。

 社屋を出るとすでに呼んであったらしいハイヤーに押し込まれ、行くだなんて答えていないのに、半分拉致に近い形で叔父の店へと行くことになった。
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