孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 店についてもふたりきりになることはなく、カウンター席で心からお寿司を堪能するルイさん。

 もしかしたら、社長のお寿司好きがルイさんにも感染ったのかもしれない。

 最初に社長とここへ来たときと同じ席だったことを思い出すと、ここにない彼の気配が恋しくてたまらなくなる。

 いつもとは違う横顔を見上げると、青い瞳が私を見てきてにこりと微笑んだ。


『ほら、サオリも食べなよ。ユウセイが帰ってきたときにサオリが元気なかったら、ユウセイが悲しむよ』


 あんまり食欲がなくて、まだ二貫しか食べていない私を見て、ルイさんはやさしく言ってくれた。

 彼が私を励まそうとしてくれているのが伝わってきて、昼間一生懸命、仕事に逃げていた私は、胸からせり上がってくる感情に瞳を潤ませた。

 涙をこぼさないように下唇を噛みしめて、うん、と強くうなずくと、ルイさんはまた元気のおすそ分けのような笑顔をくれた。
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