孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 しかもその声は、私の耳のすぐ後ろ。

 同時に吹きかけられる温かな吐息。

 そして、寂しさに凍えていた体を背中からすっぽりと、覚えのある匂いに包み込まれた。


「待たせたな」


 一瞬、会いたいがあまりに、夢でも見ているのかと思った。

 でも確かに聞こえた声に、ぎこちなく顔を振り向かせる。

 そこには切れ長の瞳をこれでもかと細めて、口元に笑みを引いた大好きな人の顔があった。


「社長……? どうして……」


 問いかけた私の口は、そうすることがごく自然なように彼の唇に塞がれる。

 懐かしささえ感じる口づけは、すぐに私の唇に馴染み、求められるがままに深く熱を交えた。

 絡み取られる舌に反応して、心臓が暴れ出す。

 ときおりこぼれる自分の甘い吐息が、女の欲情を煽り、体の真ん中をきゅんきゅんと疼かせた。
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