孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「佐織」


 呼びかけられてようやく顔を上げることだけはできた。

 見上げたそこでは、すべてを統べるような力強い光を宿した瞳が、真っ直ぐに私を見つめていた。


「こんなに強く帰りたいと思う場所なんて、今までなかった」


 そっと肩を抱き寄せられて、額と瞼、頬に順番にキスをされる。


「お前が待っててくれているってだけで、仕事に対する意識も段違いだった。帰る場所があるというのは、こんなに心を強くしてくれるものだったんだな」


 目を細める社長は、私の手の中にあるガラスの靴から、小さなピンクダイヤを取り出す。

 部屋の照明にもキラリとささやかにも存在感を示すそれに、社長がふわりと口づけた。

 そのしぐさが妙に色っぽくて、想いのあふれ続けている胸が、きゅうっと強く締めつけれらた。


「こうやって、ときどきは急な出張で離れてしまうことがあるかもしれないけど」


 シルバーの細いチェーンを私の首に回し、後ろで留めてくれる。

 鎖骨の間にかすかに冷たい感触が触れたけれど、すぐに私の肌に馴染んだ。
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